優れたアーリア人男子の出産を奨励する、ナチスの優生政策の宣伝ポスター(右)に描かれたドイツ人女性が、青い衣装を身に着けているのは、偶然ではない。
キリスト教文化において、青い衣は聖母マリアのシンボルであり、ヨーロッパ絵画において、慈愛の象徴である聖母子像に描かれるマリアは、ラファエロの聖母子像(左)がそうであるように、たいがい青い衣をまとっている。
このように、その絵画中の人物が何者であるかが分かる随伴物のことを、図像学ではアトリビュートというが、青い衣は聖母のアトリビュートだ。ナチスは、その聖母の慈愛とは対極の優生政策を宣伝するポスターに聖母のアトリビュートを借用したのだ。それは、その政権が遂行する冷酷な事態をカモフラージュするための手段だった。

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