母とNHKの大型連続歴史ドラマ『坂の上の雲』を観た。作品については、言ってしまえばお仕舞いの内容だから、何も言わないことにする。ここでは、母が観ているので、付き合っているとだけ言っておこう。
ただ面白いシーンもあった。主人公が海軍兵学校に入学して、食堂でカレーライスを食べるシーンだ。昔から「横須賀海軍カレー」というレトルトカレーが 売られていることは耳に挟んでいた。でも、食べてみたいとは、ついぞ思わなかった。しかし、ドラマでそれを食べている士官候補生たちを観た今、ちょっと興味が出てきた。
レトルトものが大好きの母も、さっそく食べたいと言い出した。どこで売っているのだろう? こういう時、ネットショッピングは本当に便利。(だから、無駄な物をつい買ってしまうのだけれど…。)さっそく楽天市場で海軍カレー8コ入りのセットを見つけ取り寄せてみた。
箱をあけ、レトルトパックを取り出し、鍋で3分間ゆでて、ご飯にトロリとかけて、期待が思いっきりふくらんだところで、一口食べてみた。
ちょっと粘りが過ぎるか。辛さは、それが苦手の母にはちょうどよい具合だったようだ。香辛料の香りは緩やか。なんと言うこともないカレーだった。
しかし、考えてみると、近代日本の洋食文化は、近代化がもっとも早かった軍隊から始まったと言って良いわけだから、海軍カレーが「なんと言うこともないありふれたカレー」だというのは、当然なのだろう。日本人にとってのカレーの原味覚は、この軍隊食に由来するのかもしれない。
8箱も買ったのをすこし後悔したけれど、母は、とても満足しているようだった。このカレーを食べながら、週末のドラマを観るというのも一興なのであろう。
ところで、同じNHKで、12月7日放送されたドキュメンタリー『日米開戦を読む—海軍はなぜ誤ったか−400時間の記録』でゲストの半藤一利氏がこう言っていた。
「軍隊はいつも過去の戦争を戦う」
けだし名言だと思った。太平洋戦争で、海軍兵学校出身の秀才たちが想定した対米戦のシナリオは、敵アメリカ艦隊を日本近海に引きつけて、一気に艦隊決戦で決着をつけるというものだったそうだ。まるで日露戦争の日本海海戦である。
頑固に伝統のレシピを守る海軍カレーを食べ続けたおかげで、航空機戦が主流になった時代の流れに背を向け、幻想の艦隊決戦を夢見たのだとすれば、何事かいわんやであるが、カレーに罪はない。海の藻屑と消えた無数の水兵たちの冥福を祈りながら、合掌して、残りの7箱をいただくことにしよう。
いただきます。
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