2010年9月24日金曜日
領土をめぐる対立は、主権国家の病気
河北省の軍事区域内で撮影していた日本人4人が拘束された。そのニュースを聴いて、数年前の経験を思い出した。
中国雲南省からメコンを下りながら踏査しているとき、チャーターしたはずのボートになぜか二人の入国管理官が乗り込んできた。チャーター船に役人をただ乗りさせる船会社の一種の賄賂だろうと思っていた。
しばらくして、そのうちの一人が居眠りを始めた。船からメコンを撮影していたカメラに 彼の寝姿が映り込んだ。それを観たもう一人の管理官が、突然、私を拘束すると言い出したのである。国境地帯を無断で撮影したという理由だ。
しかし、メコン流域はどこをとっても国境だ。それを撮影したから拘束するという理由はあきらかに嫌がらせだ。要するに、居眠りを撮影したテープを取り上げたかったのだろう。押し問答の末、テープの該当箇所を消去することで折り合い、管理官たちは、下船していった。
役人が無理難題をふっかけ、やりたい放題できる社会が、まだ、ここには残っているのだと思った。現地で暮らす住民たちは、さぞ大変だろう。そして、今回、拘束された日本人たちは、どんな扱いを受けているのだろうか。背後に国家指導部の指示があるとすれば、テープの消去や手土産程度じゃ済まないだろう。同情を禁じ得ない。
尖閣列島(釣魚島)海域で起きた船舶衝突事件で、浙江省杭州の日本人学校が投石され、一方、神戸の中国人学校に爆破予告の電話があった。国家間に緊張が生じると、かならず弱者に嫌がらせする卑怯者が現れる。その現象に国家や民族の違いはない。どちらもなんと下劣な連中だろうか。
領土をめぐる対立は、主権国家が原理的に抱える病気だ。国家の病気に感染して、隣国の子どもたちに投石したり、脅迫したりする、おろかな大衆になりさがるか、国家とは一線を引いて、それを克服する智恵を模索する賢い市民になるかが、二つの国家に跨って暮らす我々に課された課題ではないか。
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