2010年3月6日土曜日

自分の趣味に子どもを巻き込む親〜日産セレナのCM

 日産セレナのCMは、嫌いだ。
 最近流行のボルダリング(岩登り)に親がはまっているのは、まあ個人の趣味だから、何も言うつもりはない。でも、このCMに登場する親は、本当に罪作りだ。
 子どもを自分の趣味に巻き込んで、岸壁を登らせる。ところが、子どもは途中で怖くなって、立ち往生してしまう。それでも、親は叱咤激励して、最後まで登らせる。子どもには、選択の余地がない。親が命綱を握っているからだ。そして、登り終えたところで、子どもは泣いてしまうのだ。それを親はうまくなだめたのだろう。最後に、笑顔が戻って、めでたしめでたし、というストーリーだ。
 しかし、こんな残酷で、身勝手な親心はない。
 子どもは、親が褒めてくれたり、関心を持ってくれたり、喜んでくれたりするのに敏感だ。本当は、そんなことをしたくなくても、親の顔色を読んで、親の先回りをする。きっとこの子も、親の趣味に付き合わされているだけなのに、自分もやりたいと言わされたのだろう。身勝手な親は、子どもが自発的に選択したのだという言い訳を自分に信じ込ませ、子どもを岩登りに追いやったに違いない。途中で、恐怖に怯える子どもにも、お構いなしの親。それを、試練への挑戦だとか、適当な言い逃れをして、最後まで、やらせる。やらせたいのは、親のエゴだ。子どもは、親の願望に、必死になって答えようとしているだけではないか。
 こんなCMは、大嫌いだ。だいたいワンボックスカーなんて存在自体が、子どもに対する親の家族サービスという大きなお世話の代名詞みたいなものだ。子どもなんて、子ども同士つるませて、その辺の路地裏や公園にほったらかしておけばいいのだ。
 と気がつくまでには、私も、同様のことをたくさんやってきた。だって、かくいう私も、かつてセレナに乗っていたからだ。気付くのが遅かった。
 

1 件のコメント:

  1. ムチャクチャ面白かったです。このコラム。こぎつね

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